アストラゼネカ米国本社

米・カリフォルニア州サンフランシスコ Designed by HOKデザイン

科学とサステナビリティ

イギリスの製薬会社・アストラゼネカの新施設がサンフランシスコのベイエリアに誕生。4つのビジネス拠点で働いていた従業員同士をつなぐことで科学イノベーションの前進を目指します。

ライフサイエンスとITの中心地であるアメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコのベイエリア。そこにライフサイエンス向けの��究・オフィス用キャンバスとして開設されたコーブ・アット・オイスターポイントにアストラゼネカの米国本社が誕生しました。

フレキシブルなラボラトリー空間と開放的なオフィス空間には、iWorkアクティビティにもとづくアストラゼネカの作業プロセスが取り入れられています。ここでは、サンフランシスコのライフサイエンスおよびITコミュニティに点在する4つの子会社に在籍していた従業員たちがアストラゼネカのミッションの実現を目指してともに働いています。

アストラゼネカの米国本社は、施設内に完備された透明感あふれる研究室、オフィス、パブリックスペースを通じて科学を全面に押し出したデザインになっています。従業員やゲストは、パブリックスペースから前面にガラスを配した研究室の様子を見ることができます。質の高い仕上げ、贅沢な素材、アートといった要素が研究室環境をより魅力的にしています。アストラゼネカのグローバルなエコシステムとベイエリアの生態系を象徴するイメージから着想を得たグラフィックが統一感あるインテリアの色調を特徴づけています。

建物の至る所に配された設備が人と人の触れ合いを促すと同時に、中央階段が部門間の往来をスムーズにします。低層階にある多目的会議室とラウンジエリアがビジネスの垣根を越えた活動をサポート。人間工学にもとづいた椅子と調整可能なテーブル、トレッドミルを配備したチームルーム、キャンパス内のフィットネスジム、オーガニックなメニューが豊富な食堂などがアストラゼネカで働く人々の健康を支えています。

この空間は、エネルギー・カーボン・ウォーター・ニュートラルを目指すアストラゼネカのコミットメントを強化する場所でもあります。最高レベルのLEED認証であるプラチナを獲得したこのプロジェクトのサステナブルなデザイン戦略には、無駄の少ない素材、最適化された照明およびコントロール、省エネ効果の高い電気製品、節水設備、高性能な空調システムなどが含まれます。

Q&A

世界的建築設計事務所、ヘルムース・オバタ・カッサバウム(HOK)のサンフランシスコ拠点でシニアデザイン主任を務めるダニエル・ヘリオット氏のインタビュー

フリッツ・ハンセン(以下、FH):今回の特別なプロジェクトについて簡単に解説してください。

ダニエル・ヘリオット(以下、DH):そうですね、私にとってアストラゼネカは完璧なクライアントです。彼らが職場に求めるレベルはとても高いのです。というのも、彼らはそこで働く人々のケアを最優先していますから。人と人が触れ合える場所、あらゆる機会を支える最新設備、プライベート空間などを備えた快適な職場は、利用者のウェルビーイングと生産性向上に必要不可欠です。アストラゼネカは、こうした点を深く理解していましたから、私たちに細かくリクエストすることはありませんでした。最初の段階から、開かれた会話だったのです。

彼らの願いは、生産性と独創性をアップさせ、知識の共有と職場内のコラボレーションを改善し、優れたワークスペースデザインとともに最大限の健康、ウェルビーイング、安全性を育むことでした。

このプロジェクトは、アストラゼネカの成長という興味深いタイミングに訪れました。私たちは、異なる企業文化と仕事環境を持つ4つの子会社に勤務していた従業員をつなぐことができるワークスペースデザインを必要としていました。デザインは、文化の共有と融合を促進させるものでなければいけなかったのです。

それと同時に、ほかの空間に対する研究室の透明性をアップさせたいと考えました。さまざまなニーズやサステナビリティに関する考えに応じられる柔軟な空間を実現したかったのです。それに加えて、地域にふさわしいものにしたいと思いました。

FH:こうした目標設定から、どのようなデザイン要素が生まれたのですか?

DH:まずは、すべての従業員が研究室内で起きていることとコネクトできるよう、研究室の透明性を高めました。さらには、研究室内にミーティングエリアを設けたのです。これは珍しいことです。それまでは、従業員たちは研究室エリアの外にある会議室を予約し、着替えて、手を洗ってからグループ会議やディスカッションに赴く必要がありました。いまでは、研究室内でミーティングができますので、時間の節約になりますし、アイデアの共有が仕事場に近い環境で確実に行われるようになりました。

建物内の色調やアートワークのデザインに関しては、従業員のフィードバックを活用しました。彼らは、科学技術を想起させる旧来のイメージではなく、地元サンフランシスコで採れる薬用植物の生態系にもとづいた色調とパターンを活かしたインテリアを好みました。そのため、空間内に物語と学びの要素が加わったのです。

日中の日当たりなどの条件に応じて特定のワークスペースに最適な植物を選ぶため、私たちは植物コンサルタントの力を借りました。オフィス内の植物がすくすくと成長してほしいと思ったからです。当然ながら、これはワークスペースにおけるバイオフィリックデザイン(オフィス空間などの建築デザインにおいて自然とのつながりを重視・向上させようとする概念)の一例でもあります。

私たちは、フロアごとに違うフードと飲み物を提供する、異なるスタイルの空間を設計しました。それによって従業員が違うフロアを訪れ、従業員同士の触れ合いを促進したかったのです。異なる4社からきた従業員たちをまとめるためにも、これは大切なことでした。階段の配置も、エレベーターではなく階段を使ったフロア間の移動を奨励しました。当然ながら、幸福と心地よさは切っても切れませんし、私たちはこうした空間とデザインに対して従業員からとても前向きなフィードバックをいただいています。これこそがクライアントと私たちの成功の鍵なのです。