モダンなデザインが目を引くこの美術館は、1969年に建築工事がはじまり、1972年に竣工しました。プロジェクトを率いたのは、アアルトと2番目の妻エリッサ、そして当時アアルトの事務所で働いていたデンマーク出身の建築家ジャック・バルエルです。アアルトたちは、ゆったりとした間取りと来館者が移動しやすい自然な流れを生み出す美術館づくりを追求しました。
空間に加え、光も重要な要素でした。アアルトたちは、館内を可能な限り自然光で満たしたいと考えました。そしてそれは、広々とした窓と天窓によって実現します。さらにアアルトは、天井の構造に曲線を用いることで直射日光が作品にダメージを与えないようにしました。そのため、1階の小規模なギャラリーは側面からの間接照明によって照らされ、明るくて温かみのある空間になっています。
「コンサートホールにとって音響が重要な要素であるように、美術館にとって光は欠かせない要素である」——アルヴァ・アアルト
アアルトとバルエルは、美術館を取り囲む木々や公園が見渡せる広々とした窓を設置することで「外」と「内」をつなぎました。アートと建築物を周囲の環境と結びつけて交流を促すというモダニズム的なアプローチは、当時はまだ新しいものでした。こうして来館者が自宅のようにくつろげる、オープンで温かみのある雰囲気が誕生したのです。
リノベーションと再解釈
オールボー近代美術館は、2年近くにわたるリノベーションを経て、2016年に再オープンしました。約40年間使われてきたこの美術館は老朽化していただけでなく、安全面の条件を満たせなくなっていたのです。また、教育、展示、運営のためのスペースも古くなっていました。リノベーションによって、アアルトとバルエルの基本的なコンセプトがよみがえりました。既存のギャラリーはモダンにアップデートされ、ヨーロッパ屈指の美術館と肩を並べられるまでになったのです。いまでは世界中の人々を迎え入れ、世界各地の美術館から集められた作品のキュレーションが可能に。館内と外の両方においてホリスティックな体験を来館者に提供できるようになりました。
グレーホワイトの大理石のフロアとコントラストをなすウッドのレイキャヴィークデイベッドは、来館者が腰を下ろして休憩するのに最適です。モダンな印象を与えるクリーンで白い壁を背に、ジュットハイキャビネットのコンテンポラリーな表情が映えます。
リノベーションは、彫刻公園と新設されたテラスにもおよびました。広大な公園は、「外」と「内」の卓越した融合を実現。公園はレンガと銅製のタイルがあしらわれた塀に囲まれています。彫刻や木々が配された園内には、さまざまな文化体験を提供する円形劇場も。緑豊かな公園のレンガの壁の下には、ドラックマンベンチがしつらえられています。美術館の外の空間を楽しみながら、新鮮な空気でリフレッシュできます。
オールボー近代美術館は、北欧モダニズムの傑作と呼ぶにふさわしい建築物であると同時に、デンマークの重要文化財でもあります。築100年以下の建築物がこのようなステータスを得たのは、この美術館は初めてです。