ポール・B・エスキルセン

デンマーク出身の建築家ポール・B・エスキルセンは、デザインにおいてフォルムと機能は釣り合っていなければならない、という信念を掲げています。エスキルセンは、国内外の企業のために現代という時代とライフスタイルを映し出した、数多くの力強いデザインを手がけてきました。1986年に建築士の資格を取得し、それ以来フリーのデザイナーとして活動しています。

デザイナーのポール・B・エスキルセンのインタビュー

——デザインに初めて興味を持ったのはいつのことですか?


私は、チーク材を使った家具を手がける家具工場で育ったと言えます。当時は、いくつかの家具をデザインしたり、家具職人としての技 術をブラッシュアップしたりしていました。試行錯誤しながらデザインし、試作品を作っていたのです。こうした経験は、デザインのニー ズについて多くのことを教えてくれました。

—創造性という点であなたにもっとも大きな影響を与えた人は?


まだ学生だった頃、スコットランドのグラスゴー芸術大学を訪れたときにチャールズ・レニー・マッキントッシュ(グラスゴー生まれの建 築家、デザイナー、画家。19世紀のアーツ&クラフツ運動の推進者のひとり)のスケッチの原本を見せてもらいました。私にとっては、ま さに啓示の瞬間でした。当時は、誰もが自由にマッキントッシュの作品を見ることができました。そのおかげで、彼のアーカイブを探索 しました。マッキントッシュの作風はグラフィカルかつ平面的で、立体的な作品を手がけていた当時の私に、デザインに応じた機能を 加えていくというインスピレーションを与えてくれました。マッキントッシュのほかにも、ハンス・J・ウェグナーとボーエ・モーエンセンが デザイナーとしての成長に大きな影響を与えました。

——ご自身のデザインの特徴とは?


形と素材が優れたデザインに欠かせないのと同じように、私たちの生き方——具体的には、日常生活における家具の使い方——も重 要な要素です。いままで数々のアウトドア家具のデザインを手がけてきましたが、国や文化、さらには時代によって使い方が変わること を理解できるようになりました。

—「トラディション(Tradition)」の制作には、どれくらいの時間を要しましたか?


トラディションは、住宅の庭園のためのモジュラーシステムとして2015年に考案した作品です。さまざまな方法で組み合わせられる ため、庭園に限らず、幅広い空間でも活躍します。考案された当時はアルミニウムを使っていたため、いまとはまったく違う表情でし た。そんなトラディションを金属ではなく木材で再現することは、思っていたよりもチャレンジングでした。サイズを調整し、当初とは違 う技術を取り入れました。ウッドは素材本来の美しさを保つだけでなく、快適さとタイムレスな美しさを兼ね揃えたデザインを叶える ために成形されています。

——この作品のスタイルのインスピレーション源は?


トラディションは「スピンドルチェア」というイギリスの伝統的な木製椅子を現代風にアップデートしたものです。この作品がミッドセン チュリー家具からも影響を受けていることも明白です。機能性と視覚的な美しさという点では、デンマークのデザイン史からインスピ レーションを受けています。同時に、家具デザインを通じて休息と安らぎを提供するパーソナルスペースづくりもヒントになりました。

—制作中に直面した課題などがあれば、ぜひ聞かせてください。


ガーデンファニチャーには、デザインと素材の両方の要素が不可欠です。快適さはもちろん、あらゆる天気にも耐えられるような、長く 楽しめるデザインでなければいけません。トラディションの場合は、特に角のモジュール部分に苦労しました。シームレスなジョイント を加えて背面とアームレストを成形し、流れるようなデザインを実現するには、高度な職人技が必要だったのです。すっきりとした見た 目を実現すると同時にひび割れを防ぐためにも、「大入れ継ぎ」という接合方法を使って木口面を隠すのも重要でした。