ジュネーヴ音楽院

スイス、ジュネーヴ

ネオクラシック様式の建物に新たな息吹を

スイス・ジュネーヴを拠点とする建築事務所・GM Architectes Associésは、3年もの歳月をかけてジュネーヴ音楽院の増築とリノベーションに取り組み、工事は2021年にようやく完成しました。ジュネーヴの歴史的建造物としての伝統を尊重しつつも、163年の歴史を誇るネオクラシック様式の建物は現代のニーズや基準にふさわしいものへと生まれ変わりました。

このプロジェクトのねらいは、ジュネーヴの街に堂々と佇む建物の歴史を称えつつ、1000m2分のスペースを増築することでした。19世紀当時の設計図を参照しながら、GM Architectes Associésの建築士たちは自然光を取り入れました。建設当初からあった建物の壁面に天窓ができたおかげで、それまでは暗かった室内に太陽光が入ってきたのです。新鮮な明るさと調和を奏でるプロポーションによって、空間はまったく新しい個性を与えられました。

歴史的建造物として保護されている建物を縦方向に増築することは現実的ではありません。そこで、建築士たちは増築される新しい空間の基準を満たすべく、新たなフロアを下に設けました。地上階の上部に開口部を設けることで自然光が入り、現在16ある教室を明るく照らします。今回のリノベーションによって、ふたつの劇場が新設されました。その一方で、既存のコンサートホールは、建設当時の内装を丁寧に修復することで、本来の美しさを取り戻しました。

建築士たちは、アルネ・ヤコブセンの代表作ともいうべきアリンコチェア、セブンチェア、ポットチェアを採用しました。理由は、歴史的建造物を支えている美しさにふさわしい、タイムレスでアイコニックなクラシックさに惹かれたからです。

それぞれの椅子は、座り心地の良さと耐久性を兼ね揃えているだけでなく、ジュネーヴ音楽院の新たな表情を引き立てています。食堂に配置された親しみあふれるポットの曲線がゆったりとした空間にさらなる居心地の良さを運びます。食堂では、色とりどりのアリンコチェアとバースツールタイプのアリンコチェアが混ざり合っています。周りの環境とのコーディネートを叶えるため、色はカスタマイズされたものです。さらには、音楽家たちが演奏中もより安定して座れるようにと、セブンチェアのベースは強化されています。